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13人目は、撮影部の鎌苅洋一さんです!

『ジャーマン+雨』は12月の渋谷での公開を皮切りに、
大阪、京都、神戸、名古屋、金沢、青森でも公開します。
さらに昨日、札幌、広島での公開も決定しました!

さて撮影部の平野さんからのバトンを受け取ったのは、
撮影のみにとどまらずさまざまな仕事を担当した鎌苅洋一さん!
各スタッフより呼び声の高かったこの男が、ついに登場です。
それではどうぞ!


Q1、まずはあなたのお名前を教えてください。よかったら顔写真も!
鎌苅洋一です。
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Q2、この映画の中での、あなたの役割は?
この映画は二台のカメラで撮られているのですが、そのうちの一台のカメラマンとライティングを中心に、助監督やマイクマンや車止めや橋詰君の子守など、そのとき映画が要求してくることは何でもやりました。

Q3、それはどんなことをするのですか?
 とても難しい質問ですね。
自分は何をしようとしていたのだろうか、と考え色々書き記してみましたが、どうにも要領を得ないのです。
あまり淡白にお答えするのもなんだか寂しい話なので、ここはひとつ箇条書き風にしてみます。わたしはこんな風に考えながら撮影していました——

役者をフレームに閉じ込めないこと。
画面内の意味をできるだけゼロに近づけること。
からっぽになった画面から別の何かがふわりと出てくるまで待つこと。
フレーム、セット、映画全体の世界観、それぞれに対する「外側」を常に意識すること。
目の前で起こっていることそのものをまず受け容れること。
「まともな人」の視点を導入すること。
シナリオに何が書いてないのか、を意識すること。
分業主義に甘んじないこと。
役者にカメラが合わせること。
その逆を厳しく禁じること。

それらはとても断片的で、一貫した公式をかたちづくるようなことは決してなく、雲のようにふわふわと脳裡をよぎっては消えていきます。
むしろ、目の前で起こっている現実がまずあって、それが求めるままにこちら側で反応してみて、その後、ああ自分はこんなことを考えて動いたんだなあと気付く、というような言い方が正しいのかもしれません。
あるものは大人の客観性をわたしに要求し、またあるものは子供の力強さを必要としてきました。それらを同時に満たそうとして、わたしのなかの「おとな」と「こども」で激しい葛藤が起こり、気が付けばなかば錯乱したようになりながら撮影していました。

なにやらコムズカシイことを考えているようですが、傍目からみれば、やいのやいの言いながらカメラやライトをあるべき場所に置いているだけです。要するにただのバカですね。

Q4、撮影中、いちばん面白かったことは?
日々の食事を美しい女性たちが、滋賀までわざわざ交代で作りに来てくれたこと。全員天使に見えました。
素晴らしいスタッフたちと仕事ができたこと。みんなもれなくグッドヴァイブスの持ち主でした。
撮影の終盤、照明の秋山君とほとんど言葉を必要としないコミュニケーションが成立しはじめたこと。
「アッキーあのさー」
「ああ、あれでしょ。これでどう?」
「お。それそれ、アッキー」
みたいな感じで。
どれも甲乙つけがたいです。
 
Q5、できあがった映画を初めてみた時、何を思いましたか?
撮影後、ラッシュを観たときは絶望的な気持ちになったものですが、撮られた素材に対して的確な編集と、やんちゃな音入れで些細な不具合はねじ伏せてしまうような力のある映画になりました。
クランク・イン当初は誰も理想としなかったものができたのではないでしょうか。

 映画美学校のMA室でほぼ完成したものを観た後、参加して良かったと初めて思いました。「横浜、やったよ!これ、ものすげえよ!」
撮影中の辛い記憶が、全て美しい思い出に塗り替えられた瞬間でした。勝手なもんですね。

Q6、この映画の主人公のよし子は、歌が得意だと自分で思っています。 あなたは、自分の特技は何だと思っていますか?
料理と口笛です。
料理をしながら口笛を吹くもよし、口笛を吹きながら料理をするもよし、双方同時に行使できることが利点ですが、披露する機会に恵まれないので、それが他に比して優れているのか不明で、そもそもそれを評価する他人抜きにして特技などと称することは、言葉の定義上認められないのではなかろうか、などと悩ましい疑問に晒されるのが欠点です。

と、いうようなムダ口。

Q7、この映画をあなたの言葉で宣伝してください。
この映画はいわゆる「優れた」映画ではありません。
わたしたちのなかには、おそらく誰一人としてそのような映画を撮る技能や才覚を持ち合わせた者はいません。
そこをスタートラインにして、わたしたちは愚直なまでに、あらゆる規範や前提に対して疑いの眼差しを向けながら一本の映画を撮り上げました。

「ジャーマン+雨」はわたしにとって、いかに限られたものを見聞きしてわたしたちが暮らしているかを教えてくれる映画となりました。
そして、ほとんどの絶望はその視界の狭さゆえに引き起こされるにすぎないのだということも。

さあ、みなさんも扉のむこう、穴の底、地平の果て、見えざるものに眼を凝らし、聞こえぬ音に耳をすませてみませんか。
きっと、なんだか不気味なような、懐かしいような、なまあたたかいようなものに触れることができるはずです。

Q8、さてさてこのバトン、次は誰にわたす??
撮影の半ばぐらいだったでしょうか、難航する現場にみんなが右往左往するなか、ブレのない、鋭い批評眼を光らせている男がすぐ目の前にいることに気付きました。
移動中のハイエース車内で、普段まったくムダ口を叩かない彼がポツリポツリと持論を展開し始めた時のことは今でも鮮明に覚えています。
以来、何よりも優先して、彼の視線の先をつよく意識しながらカメラを据えることが多くなっていました。

 「思想するライトマン」秋山恵二郎君です。アッキー、あんた結局何を見てたの?



鎌苅さん、ありがとうございました!
そして鎌苅さんのご指名は、照明部の秋山恵二郎さん。真冬の撮影、寒い現場を明るくかつ温かく照らしていた、という噂のその人です。
それでは秋山さん、よろしくおねがいします!
by german-ame | 2007-11-01 16:50


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